参:夏の終わり [14/14]

 久し振りに沙那の顔も見たい。
 彼女は聡く、可愛い子だ。蘇芳のお気に入りでもある。
 無愛想な運転手は、無言で頷いて見せた。
 発車する寸前に、何かが蘇芳の目の端に留まった。
 人のようである。
 振り返って見ると、相合い傘をした二人連れであった。
 今どき珍しい和装姿で寄り添う男女は、骨董屋の主人と写真の女性に、どこか似てはいないか……。
 こちらに会釈したようである。



[了]


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©2006/三上蓮音