参:夏の終わり [7/14]

 身寄りのない朝凪である。葬儀は老人会か町内会で執り行うか、また、無縁仏として葬らねばならないのかと、近所の人々がやきもきしていたところに弁護士が現れ、全て取り計らってくれたことに感謝していた。
 だが、細かい気配りというものはやはり至らないようである。
 「朝凪老について、皆さん心配されていましたからね。こうして葬儀を執り行うことが出来て良かったと言っていましたよ」
 「万事解決?」
 「そうですね……、大体は。古物は同業者が引き取ることになっていますし、私物の大部分は教会に寄付されます。幾つか、巳結に贈与される品があるようですし、僕は不動産の処理を一任されています」
 結己は近代建築保存会のメンバーであり、朝凪も、会員に名を列ねることこそなかったが、会の活動内容などは結己を通じて知っていた。
 だからといって、赤の他人にそんな大役を一任するとは思いがけず、結己も驚いている。
 最善を尽くしたいとは思っているが、いつも理想通りに行えるとは限らない。それを知っているだけに、些か重荷でもあった。
 「警察のほうは?」

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©2006/三上蓮音