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弐:口入れ屋「楸」 [5/11]
「初老の男性でね、完全に死んでるのは見て分かったけど、振り返ったら女の人は消えてるし……」
「それで?」
結己は蘇芳の向いに座り、話を聞いている。
時折、目に見えない何かを捉えるように目線を彷徨わせるのが、奇妙といえば奇妙である。
「仕方ないから、隣の家に駆け込んで救急車呼んでもらったよ」
「そう……」
「そこにいてくれって言うから、お隣のおばちゃんと話しながら待ってたんだけど。警察も一緒に来て、事情聴取されちゃったよ」
その言葉に、結己は少しばかり眉根を寄せた。
「女の人のことは話したんですか?」
「話したよ。そしたら何か胡散臭がられちゃって、『署までご同行を』とか言い出すから、用事があるって言ってバックレて来ました」
語尾にハートが付きそうな口調である。
結己は額に手をやる。まったく頭が痛い、と思う。
蘇芳のほうが結己より年上なのだが、まるで大人気ない。
その上、自分の言動が多少ならずとも周囲を混乱させるという自覚にも欠けている。
それが原因で無駄にトラブルを引き起こしているのだが、本人はあまり気にしていないようである。
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