弐:口入れ屋「楸」 [4/11]
蘇芳がそう言うと、自分が話題に上っていると知ってか、はたまた突然賑やかになったことを驚いてか、小鳥は「ピチュ」と一声鳴いた。
「ちっちゃいのは相変わらず元気そうだね」
珈琲を淹れて戻った結己は、その言葉に眉を顰めた。
「それが……。このところの暑さで参ってたみたいで、試しにとクーラーを入れたら、やっと食欲が戻ったんですよ」
「じゃあ、冷房はそれで?」
「そうですよ」と答え、結己はため息を漏らす。不本意だが仕方ない、といったところか。
この小鳥は、恋人に押し付けられ、嫌々飼うことになったという経緯がある。
だが、今やすっかり溺愛している事は蘇芳も知っていた。
「ふぅん? ということは、ちっちゃいの様々だねぇ……」
そう呟きながら、これからは「小鳥様」と呼ばなくちゃいけないな、などと考える。
「ところで、そろそろ本題に入っていただけませんか?」
蘇芳の前に珈琲を置き、結己はそう言った。
「……それで、慌てて奥に行ってみたら、本当にあったわけ。死体が」
蘇芳は暢気に言うと、自分が買って来た干菓子を摘んで口に放り込んだ。
まるで「そこに椅子があった」とでもいうような口振りである。
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