壱:熱夢の客人 [6/9]

 祖母だか曾祖母だかの代から受け継がれてきた物らしく、幼少期に親しんだ品ならば思い入れもひとしお深いのだろう。
 叶うものなら、自分の手で探し出したいと思う。
 彼の人の面影が脳裏に浮かび、蘇芳は思わず笑みを浮かべた。
 すぐにハッとして、ニヤけた口元を引き締め周囲を見渡すが、蘇芳の他に人のいる気配はまるでない。
 狭い店内である。他に客がいないのは入ってすぐに分かった。
 蘇芳のいる場所は十坪に満たない土間で、商売柄か、足元は板敷きに替えられている。
 壁面には天井近くまで家具や棚などがバランスよく配置され、その中や、段差で棚となった場所にも器や小物が整然と並べられていた。
 中央には人が通れるだけのスペースを空けて机が置かれ、その上もディスプレイに利用されている。
 狭いながらも工夫され、品数が多い割に見苦しさは感じられない。
 土間の向こうには上がり框に座敷が設えてあり、畳敷きのその場所にもやはり壁面に家具や骨董が並んでいたが、衝立てと机で帳場が区切られている。
 暖簾の掛かった座敷の奥は、居住スペースとなっているのだろう。

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©2006/三上蓮音